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吉良吉影は静かに暮らしたい

2018
08,19
冒頭。立ち上げシーンで「身分の違う恋」というこれだけでも一本映画がとれそうなネタを爆速で仕上げていく。軽やかなミュージカルシーンでミュージックビデオを見るように一気にスッとストーリーが入ってきてしまう。ミュージカルの強みだ。

二人は幸せなキスをして終了…からがこの映画の始まりなのだ。上流階級と下流階級。チャリティを手に入れたことで解決したかに見えるこの構図はバーナムにずっと黒い影として付きまとう。

「プロモーターが主人公」というのも新鮮に見える。野球で言う監督ですらない、言うなればオーナー?でもないな。NBPとか…?まあ、とにかくあまり見たことが無い視点から物語が展開する。それだけでも面白い。

バーナム自身の明るいキャラクターと強い意志、ミュージカルシーンに支えられて、暗くなりがちな展開にも関わらず軽快にストーリーが進んでいく。「ユニークを集めたサーカス」というかなりな危険なアイデアも明るく、華やかなものとして描かれている。

ただ、サーカス面子の歌とダンスがすごすぎて、バーナムのバレエをやってる方の娘が「バレエはサーカスとは違って高度な訓練が必要」っていうシーンがあるんだけど、確かに、史実としてのバーナムのサーカス小屋はユニークたちを「見世物」としていた「ショー」とは程遠いものであったはずなので、このセリフは成り立つんだけど劇中のサーカスはマジで現代舞台も真っ青の超高度な舞台に仕上がっていて「いや~、あれは高度な訓練が必要だよお嬢ちゃん…」という気持ちになってしまう。

娘と言えば、二人の娘がキャッキャしてるのは非常に可愛らしいんだけど、バレエをやってない方の子の存在意義というか、必要性があまり感じられなかったんだよな…。史実としてバーナムに二人の娘が居るから~とかかもしれないんだけど、娘一人でも良かったような…気がしないでもない。

正直言うとバーナムがすごい悪いヤツに見えるんだよな。劇中でも触れられているけど、自分の野心…というか、野望のために集った仲間を口先で利用して平気で裏切るような、そんなキャラクターとして描かれてる。それはもちろん、彼自身が幼少期に受けていた身分の低い「仕立て屋の息子」としての扱いに起因するトラウマの様なもの(「上流階級へ認めさせる」ことへの異常なこだわり)なので、結局は彼を虐げた上流と下流というこの社会の構造が原因であるのだけど。あと、演者というか、この…ショービジネスに携わる人間から見たプロモーターのイメージというのが「そういうもの」という皮肉も込められているのかもしれない。

新たに仲間にしたフィリップの戦略は素晴らしかった。えてして「ゲテモノ」扱いを受けていたサーカスに「エリザベス女王の謁見」という箔を付けたのだ。狙うべきは頭から、というこの戦略は実現さえできれば本当に有効なのだ。

しかし、この「箔」を付けるために行った行為は、逆にバーナムとオペラ歌手のジェニーとの出会いを生んでしまう。もちろん、ジェニー自身は悪いキャラクターではない。恵まれた生まれではなかった自分の環境から、慈善事業も積極的に行う善良な人間だ。しかし、バーナムはチャリティの父親(上流社会)を見返すことに躍起になりすぎていて、上流階級で受けそうな出し物(オペラ)に流れてしまう。それまでの彼を支えていたサーカスの出演者たちを隅に追いやるようになるのだ。まるで昔の自分が上流階級の人間に受けていた扱いの様に。ここの心の動きがめちゃくちゃリアルでこれを描くとバーナムが悪いやつになるんだよなあ…っていうのが分かっていながら敢えて描写されている。

それでも、バーナムが主人公としての「格」を失わなかったのは、燃え盛るサーカスの中からフィリップを救い出したからだろう。これはおそらくフィリップでなかったとしても、サーカスの出演者の誰であっても、彼は炎の中に助けに行っただろうという確信を持てるシーンだった。この一点が契機となって彼の評価は逆転していく。

オペラ興業が失敗し、ジェニーとの不倫疑惑で妻も娘も失い、サーカスは焼け、全てを失ったバーナム。その状態になって初めて、彼は自分がショーに何を求めていたのか、なぜ自分がショーをやろうと思ったのか、それを思い出した。それはチャリティと初めて出会った時、上流階級のマナーのしがらみにとらわれていた彼女を「笑わせてやろう」と思った時の、自分の中から自然と湧き出した気持ち、すなわち「人を笑顔に、幸せにしてあげたい」という願いを思い出したのだ。

それが彼の原点であり、ショーにおいて…いや、人が人を楽しませるおよそ「表現」と呼ばれるもの、それらすべてに共通する、最も大切なものなのだ。

思い出の海岸でフィリップと再会するチャリティ。彼女の言葉「私は愛する人だけを求めた」は重い。上流階級の暮らしを捨て、常にバーナムを支え続けた彼女の言葉。最初から最後まで信念を貫き通したのは彼女の方だったのかもしれない。
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