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吉良吉影は静かに暮らしたい

2018
04,15
総評

構図的には劇中にもアレックスが言ってたように「強盗VS殺人・誘拐犯」なので、登場人物全員悪人アウトレイジ感はある。とはいえ、「殺人」に関しては強盗に対する正当防衛なので罪にならないような気がするけど。

目的がシンプルでいい。恐怖じいさん(忍び込む前はそんな事は思いもしなかったけど)の住む家から現金を奪って逃げる。これだけ。ちょっとだけ臭わされる三角関係もマネーの早々の退場で完全にじいさんとの戦いに専念できる。

じいさんの「盲目」設定が新鮮。これのお陰で今までのホラー映画だったらアウトになるような場面でも息をひそめてやり過ごせば、「なんとかなる」場面が多い。ドント・ブリーズ(息をするな)という題名からして、ここが映画のキモになっているのは、製作者側も意図していた所だと思う。この設定のおかげ(?)で、じいさんは普通のホラーの犯人とはちょっと動きが違う。なんというか、ゲームのCPUに近い動きなんだよな。一回捕捉されてもしばらくすると警戒が解けるところとか。この辺りは「視認」とその他の感覚で捕らえた場合の差なのだろうか。物音はなんだかんだで別の要因も考えられるけど、目撃は他の要因考えられないからなあ。

最初のマネーが寝室でじいさんと対面した時も、一瞬じいさんが寝ぼけてマネーをやり過ごしたのかと思ってしまったけど、あれは「盲目」設定を強く印象付ける場面だったのだ。寝室で寝るまで見ていたのが娘の昔のホームビデオというのが物悲しい。

腕力と地の利(自分の家)に優れるが、目が見えないというハンデを負っているじいさんと何が何でもお金を持って帰りたいロッキー、そしてロッキーに惚れてるアレックス。三者三様の制約のお陰で狭い一戸建て(まあ、アメリカナイズだから日本の家とは違うけど)内でちゃんと物語が展開することに違和感はあまりない。特に「自分たちも強盗をやっているせいで警察が呼べない」というのが上手い。事前調査での「人通りもない、向こう四件空き家」という強盗実行において絶好の条件も「他人は誰も助けてくれない」という状況となって自分たちにハネ返ってくる。湖畔の一軒家や嵐の無人島でなくてもクローズド・サークルは可能なのだ。

正直最初は、じいさんの苛烈な反撃もまあ、強盗してるの主人公側だし、それに盲目のじいさんにとってはお金は虎の子だししょうがないかなという部分もあったんだけど、やっぱり転機は地下室に監禁されていたシンディが発見された時。異様なほどに厳重な家の警備は最初から「この家から人を逃がさない」ために行われていたのだ。

そこからは攻守逆転しまくる展開。「あ、ここで終わりかあ…」という場面が何度か訪れても、その度にじいさんが復活してくる。最後、家から脱出してもまだ恐怖が続いたのはさすがに驚いた。

最後、ロッキーが妹と新天地に向かうのだけど、じいさんが生きていたニュースも流れてもはやロッキーにとってはこの世界全てがあの一軒家のように逃げるところのない場所になってしまったのだ、というラストもいい。

元々、血痕とか残りまくりだし警察には追われることになっていたロッキーだけど、そこにじいさんも加わってしまった。じいさんももちろん狂人だったんだけど、それはそれとして狂人からなら金を取ってもいいという理屈にはならない、という事なのだろう。

「盲目」じいさんによる新感覚ホラーを味わえた、という点や登場人物それぞれの設定を上手くかみ合わせて街中でクローズド・サークルを作った点など、かなり丁寧に作り込まれているなという感じの映画だった。

トピックス(とりとめのない感想)

・「盲目」とはいえ、匂いや物音で完全にそんなハンデをものともしないかと思いきや、かなりの「制約」を負ってる感があった。もちろん、それが「制約」となってくれている所がこの映画の見どころなのでそれはいいんだけど、臭いを頻繁に嗅いでいる描写はあるけど、それが実際に功を奏した場面はあまりなく(割と近くでクンクンやってもアレックスたちに気が付かない)、物音を立ててもわりとスルーしている場面も多かった。ロッキーが金庫の暗証番号打ってる電子音とかモロに聞こえてた上にあの場所でしかならないだろう…という感じ。

・アレックスの不死身ぶりがすごい。正直、じいさんよりも肉体的には強靭だったんじゃないかという感じである。まあ、ぶっちゃけメイン人物がロッキーとアレックスしかいないせいで、「ショッキング場面」を演じられるのがアレックスしかいなかったんだよな。暗闇でじいさんに捕まってそのまま闇に消えたり(ここなんで助かったのか良く分からなかった。銃の弾は切れてたけど、完全に捕まったじいさんの腕力から逃げる術はあったのか…??)窓から放り投げられて下に落下するわ、その後に銃でとどめを刺されたはずなのに生きてるわ、じいさんと乱闘の末にハサミでぶった切られる(切られたのはたぶんマネーなので叙述トリックみたいな感じだけど)わで、何度死んだんだお前…。

主体的に盗む気マンマンだったロッキーよりも実は巻き込まれ感がすごい彼だったので生き残りあるかもと思ったけどダメでしたね。まあー、でも彼は生き残っても父親も会社クビになっちゃっただろうし、生きてても良い事なかったかもね…。

・マニーはほんとにどうしようもないヤツなんだけど、最初の犯罪で強盗に入った家で楽しそうに立ち小便してたのがちょっと良かった。なんだろうね、あの描写…。証拠を自分から残すバカです、と言いたかったのか。まあ、ファッション狂人を演じていた彼がじいさんというホンモノの狂人の前では命乞いをするだけの男でしたというかませ的な意味もあったのかもしれない。最後に「忍び込んだのは俺一人」って言って他の二人を逃がしたときはわりとグッと来た。これと対比してアレックス辺りが捕まった時にロッキーを売るかなと思ったけど、そこまでアレックスも腰抜けではなかったようだ。

・冒頭で引きずられていた女性はなんだったんだろう…という気はしてたんだけど、あれはシンディと見せかけてやっぱりロッキーだったのかな。見直せば分かると思うけど、記憶はわりと曖昧なので「女性が引きずられていた」ということしか思い出せない。あの場面は上手かった。

・じいさんの復讐方法はかなりえげつない。それ故にホラー的に言えば良い復讐方法だった。事故の相手を捕まえて監禁させてもう一度娘を作る…。この方法で本当に恐ろしいのはある一定の「理」が通ってるところなんだよな。何の理屈もなくムチャクチャで理不尽な復讐を見せられるよりも、「あー、なるほど…」と一瞬思ってしまう手法。

シンディが死んだときにじいさんが悲しんでいて、なんで悲しんでるか最初は分からなかった(せっかく捕まえたので、もっと拷問とかして苦しめて殺してやりたかったとかかな…とか思ってた)んだけど、それを遥かに超えた計画がじいさんの中にあったのだ。しかも、その計画を聞けば「だから悲しかったのか」と納得も出来てしまう。

もちろん、思いついても普通はしないんだけど、「人の心(理屈)を残しつつも、それでもタガの外れてしまった狂人」というのが一番恐怖を感じる。

「レイプはしないよ」と言いつつ、直接精液をスポイト(?)に入れて種付けをしようとする場面とか「レイプ…とは??」という哲学を感じられる問答で非常に良かった。(良かったの?)
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